吉本そうぞう「自然を守る、そして自然に守ってもらう」

 高槻市の防災と聞いて真っ先に思い浮かべるのが、雨水による浸水です。地球温暖化による、集中豪雨などの被害の拡大は高槻でも連続しており、平成 24(2012)年には、床上・床下合わせて約900件の浸水被害がありました。そのため高槻市では「総合雨水対策アクションプラン」を作成し、雨水貯留施設、雨水流出抑制施設などの整備を行ってきました。平成24年の被害を経験した今、緊急にそういった施設の整備は確かに必要かもしれませんが、私は農地、山の森林を守ることをもっとすすめたいです。

 高槻は44%が森林です。ところが2018年の台風、最大瞬間風速54.7M /秒という大きさで、610ヘクタール(甲子園160個分相当)の森林が倒れてしまいました。樫田・原の住民の方も大変驚いたと聞いています。朝起きたら、天地がひっくり返るような光景で、見る限り一面の木が倒れてしまっていたと。この森林の修復がまだ終わっておらず、土砂崩れのリスクが継続しています。

 ところで林野庁のHPによると、森林は裸の土地の三倍、草地の二倍、水をためることができます。また「田んぼダム」という言葉があるように水田や畑も保水力が高いです。農地をなくし税金を使って開発し、結果水害の被害を拡大させ、それを防ぐためにまた税金を使って雨水貯留施設を作る。少子高齢化の時代に、そんな税金の使い方は危ういです。開発を無理に進めず、補修により道路や大切な公共施設の長寿命化をはかりながら、身近な自然は防災のための資源として手入れをするほうがずっとよいです。

 そして同時に、森林には水源林としての役割があります。高槻市では、地下水と山間部を流れる河川の表流水を自己水源として利用しています。 自己水源からできる水道水は、市内給水量の約30パーセントにあたり、またこの自己水源による水は大阪広域水道企業団から購入するよりも費用がかかりません。渇水の際にも絶えることがないです。また、南海トラフ大地震などで仮に水道が止まったとしても、地下水の供給はしやすいという点でも防災上、非常に重要です。高槻の森林の復旧が急がれますが、それはつまり地道に植樹をしなければならないのですが、より水を吸収する土壌を作る広葉樹を植樹し水源涵養の森を増やしていくことを行政としても後押しすべきです。どんぐりで親しまれるカシやナラなどの広葉樹林は根が深く、土砂崩れが起きにくい。加えて今年は花粉症が大変だったと聞いていますが、そういった被害も広がりません。森林や農地を回復させ、日ごろから手入れ維持に努めることが防災に強い町づくりに必要です。